子どもが挑戦したくなる!:フィンランドに学ぶ「失敗を活かす」教育と実践アイデア
子どもが挑戦したくなる!:フィンランドに学ぶ「失敗を活かす」教育と実践アイデア
日々の小学校現場では、子どもたちが新しい課題に挑戦する姿を見るのは喜ばしいことです。しかし、「間違えたらどうしよう」「失敗したら恥ずかしい」と、一歩踏み出すことをためらう子どもたちも少なくありません。完璧を求めがちな環境では、失敗はネガティブなものと捉えられがちです。
一方で、フィンランドの教育では、失敗を「学びの自然な一部」として捉える文化が根付いています。なぜフィンランドでは子どもたちが失敗を恐れずに挑戦できるのでしょうか?そこには、日本の小学校教育でも活かせるヒントがたくさんあります。
フィンランドの教育に見る「失敗」への視点
フィンランドの教育は、「すべての子どもに質の高い教育を保障する」という理念に基づいています。競争よりも協調を重んじ、画一的なテストの点数偏重ではなく、子どもの個性や進度に応じたきめ細やかなサポートが行われます。
このような環境の中で、「失敗」は単なる間違いや間違い探しではなく、「次はどうすればうまくいくか?」を考えるための重要な機会と見なされます。教師は、子どもが間違えること自体を責めたり、過度に評価を下げたりすることはありません。むしろ、なぜそのように考えたのか、どこでつまずいたのかを一緒に振り返り、次に繋げるための対話を大切にします。
これは、「成長マインドセット」と呼ばれる考え方に近いと言えます。人間の能力は固定的ではなく、努力や経験(そして失敗からの学び)によって成長できる、という考え方です。フィンランドの教育は、このような成長マインドセットを育む基盤を持っていると言えるでしょう。
なぜ「失敗を活かす」学びが重要なのか?
失敗を恐れずに挑戦し、そこから学ぶ経験は、子どもたちの非認知能力を育む上で非常に重要です。例えば、
- レジリエンス(立ち直る力): 失敗してもくじけず、次に繋げようとする粘り強さ。
- グリット(やり抜く力): 目標に向かって粘り強く努力を続ける力。
- 問題解決能力: 失敗の原因を分析し、改善策を考える力。
- 主体性: 失敗を恐れず、自ら学びに向かう意欲。
これらの力は、知識の習得だけでなく、変化の激しい現代社会を生き抜く上で不可欠な力となります。単に知識を詰め込むだけでなく、「学び方」を学ぶこと、そして失敗から学ぶ経験こそが、子どもたちの「生きる力」を育むのです。
日本の小学校現場でできること:失敗を活かす実践アイデア
では、多忙な日本の小学校現場で、フィンランドのような「失敗を学びとして活かす」文化や環境をどのように取り入れていけるでしょうか?いくつかの具体的なアイデアをご紹介します。
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声かけの工夫:結果だけでなく「プロセスと挑戦」を承認する
- 「正解/不正解」だけでなく、「どんなことに挑戦したの?」「どうやって考えたの?」とプロセスに焦点を当てる声かけを増やしましょう。
- 「失敗したね」ではなく、「惜しかったね!」「ここから何を学べそうかな?」といった前向きな言葉で、振り返りを促します。
- 難しい課題に挑戦したこと自体を「勇気ある一歩だね!」と褒め、結果に関わらず挑戦を価値あるものと伝えます。
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「失敗談」を共有する時間を持つ
- 先生自身の失敗談(例:授業準備でうまくいかなかったこと、新しいことに挑戦して大変だったことなど)を子どもたちに話してみましょう。先生も失敗から学び成長することを伝えることで、子どもたちにとって失敗が身近で肯定的なものになります。
- 子どもたち同士で、うまくいかなかった経験やそこから学んだことを共有する時間を設けるのも良いでしょう(例:発表会、振り返りシートなど)。
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評価の視点に「挑戦」や「改善」を盛り込む
- テストの点数だけでなく、ポートフォリオや観察を通して、子どもが難しい課題に挑戦した姿勢や、失敗から学んで次に活かそうとした努力を評価する視点を取り入れます。
- 「できたこと」だけでなく、「次に挑戦したいこと」「改善したいこと」を目標設定や振り返りの項目に入れることも有効です。
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試行錯誤を推奨する授業デザイン
- すぐに正解が出ない、複数の解決策があるような課題(例:プログラミング的思考を養う課題、ものづくり、探究的な活動)を取り入れ、子どもたちが自由に試したり、間違えたりしながら学びを進められるようにします。
- グループワークで、メンバー同士が互いの失敗を恐れずにアイデアを出し合える雰囲気を作ります。
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教室環境での意識付け
- 「失敗は成功のもと」「まずはやってみよう!」など、失敗をポジティブに捉えるメッセージを掲示したり、子どもたちの挑戦の記録を掲示したりするのも効果的です。
まとめ
フィンランドの教育から学べる「失敗を活かす」視点は、日本の小学校現場で子どもたちの主体性や非認知能力を育む上で非常に重要なエッセンスです。大掛かりな改革でなくとも、日々の声かけ、授業でのちょっとした工夫、評価の際の意識変化など、すぐに始められることもたくさんあります。
子どもたちが失敗を恐れず、自由に挑戦し、そこから力強く学び成長していけるよう、私たち教師ができることから少しずつ取り入れていきましょう。子どもたちの「やってみたい!」という気持ちを大切に育んでいくことが、未来への大きな力に繋がるはずです。